エンジニアやデータアナリストといった専門家でなくてもデータ加工・分析・レポート作成ができるので、その利便性から近年企業で活用が増えているBIツール。
なかでも、高度なデータビジュアライゼーションや初学者でも使いやすい操作性を有しているので、Tableau(タブロー)は実務で幅広く活用されています。
しかし、Tableauの学習教材は多くはなく、英語のソースのものも多く、「何をどのような順序で学習すればよいかわからない」「どの参考書で学習したらよいかわからない」と悩んでいる方も多いでしょう。
本記事では現役データサイエンティストである筆者の視点から、Tableauの概要解説、活用メリット、学習本の選び方、おすすめ参考書を、網羅的かつ具体的に解説していきます。
監修者
經田 原弘
東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻修了。大学時代は3次元の医療データの平滑化処理を研究テーマとし、大学院時代はJAXAと協業し、月探査機かぐやの衛星データから、月面上の水の存否について調査していた。新卒では株式会社リクルートにてレコメンドシステムの開発等に従事し、現在は製造業系スタートアップにてデータサイエンティストとして勤務。応用情報技術者試験・E資格合格者。
Tableauとは?
Tableauは、Tableau Software社が提供するデータビジュアライゼーションツールです。ExcelやGCPなどと連携したデータをリアルタイム更新し、データを直観的にわかりやすいグラフに変換させることができます。その使い勝手の良さから全世界で86,000社以上に採用されており、日本でも活用が進んでいるBIツールのひとつです。
BIツールはほかにも数多くあるなか、大きく ①圧倒的に使いやすい操作性 ②グラフやチャートの種類が豊富 ③コミュニティのサポートがある の2つの特徴からTableauが選ばれています。
特徴①:圧倒的に使いやすい操作性
Tableauを一言でいうと、「データを直観的な操作で簡単にグラフにできる」ことです。
実際に操作してみるとわかりますが、Excelのように値をテーブルにいちいち貼り付けたりすることなく、ドラッグアンドドロップで操作でき、軸の目盛り等も自動で調整がされるため、圧倒的に手順が少ないため、簡単にデータを出し傾向を捉えることができます。
たとえば、月ごとの売上と利益を1つのグラフで示す二重軸グラフを作成したいときを考えてみましょう。
Tableauでは上記のように「Table」にある「Sales」をドラッグアンドドロップするだけで瞬時に二重軸グラフを作成できます。
このように簡単な操作で高度なグラフやビジュアライゼーション作成ができるので、初学者の学習コストが低く、一度ダッシュボードをつくってしまえばファイルを配布するだけで誰もが自由に思い思いのデータ分析をできるようになります。
余談ですがDXの文脈で組織にデータ分析の文化を定着させたいときによく選ばれがちなのがTableauです。
特徴②:グラフやチャートの種類が豊富
Tableauはグラフやチャートの種類が豊富にあり、カスタマイズの幅も広いので、分析内容に応じて最適なビジュアライゼーションで分析結果を表現できます。
たとえば、下記のようにApple社の株価を折れ線グラフで表すだけでなく、イベントとの連動性も表現できます。これにより、各イベントがどのように Apple 社の株価パフォーマンスに影響を与えたかを一目で見ることができます。
このように豊富なビジュアライゼーション機能を有していることで、直感的にわかりやすく分析結果を表現できることがtableauのメリットです。
特徴③:コミュニティのサポートがある
また、コミュニティで初学者はわからないことを質問できたり、ほかの人のビジュアライゼーションを見て参考にできるので、初学者におすすめです。
コミュニティで質問すると、ほかのユーザから回答があり、参考書で理解できなかったことをすぐに解消できるので、効率的に学習を進めることができます。
さらに、Tableau Publicというプラットフォームを通じて、ほかのユーザーが作成したダッシュボードやビジュアライゼーションを見ることもできます。
ほかのユーザーのビジュアライゼーションを参考にすることで、自分にはなかった視点やチャートのまとめ方を学習でき、わかりやすく分析結果をまとめるヒントを得られるでしょう。
Tableauの参考書の選び方
ここからは編集部が考えるTableauを学習する上での参考書の選び方を紹介していきます。
- データビジュアライゼーションの知識も同時に学習できる
- イラストや図が豊富にある
ポイント①:データビジュアライゼーションの知識も同時に学習できる
データビジュアライゼーションとは、データ分析の結果をわかりやすく表現することをいいます。
豊富なデータビジュアライズの方法があるTableau。最大限活用するためには様々な図やグラフの表現の引き出しを持っておく必要がありますが、意外にも「データをどのようなグラフで表現するか」の引き出しが少ない人は多いです。
そんな方にはTableauの操作を学ぶだけでなく、「そもそもどんなメッセージをしたくて、相手に伝えるために最も効果的な方法はなにか」というデータビジュアライゼーションの基礎を同時に学べる本をおすすめします。
もしデータビジュアライゼーションを基礎から学習したい方は本書を辞書のように活用してもよいかもしれません。
本書はデータ分析の結果を正しく伝えるために必要なスキルをBIツール初学者向けに解説しているので、はじめてデータビジュアライゼーションを学習する方に非常におすすめです。
イラストを用いて良い例と悪い例を比較しながら学習できるので、どのようなポイントに注意して分析結果を示すとよいか、一目で理解できるでしょう。最終章では、Tableauを用いた解説もあるので、Tableauでデータビジュアライゼーションを学習できる点がおすすめです。
ポイント②:イラストや図が豊富にある
2つ目のポイントは直感的に操作方法を理解できるようイラストや図が豊富な参考書を選ぶことです。
たとえば、「パラメータアクション」という機能の利用方法を学習するときを考えてみましょう。
文字だけで「リファレンスラインという名前にして、パラメータを設定する」という手順を説明されても、具体的にどこのフォームに名前を入力するのか、どのような操作をすればよいか直感的に理解できません。
下記のようにTableauのダッシュボードと同様のカラフルなイラストや図があると、どのような画面でどう操作すればよいかが一目でわかるので、操作方法をすぐにマスターできるでしょう。
合わせて、図を通じて学ぶことでデータの表現方法のストックにもなります。どのようなビジュアライゼーションで表現するべきかを学習できるので、分析結果をわかりやすく表現するスキルも併せて身に付けることができるでしょう。
おすすめ参考書
ここからは上記2つの選び方に合わせて、編集部が厳選したTableauを学習できる良書を紹介していきます。
【初学者向け】Tableau Public実践 BIツールデータ活用 100本ノック
本書はTableauの活用方法を100パターンに分け、「データの読み込み方法」から始まり、「レーダーチャート、ガントチャートの作成方法」まで基礎から応用まで網羅的にTableauをマスターできるので、Tableau初学者におすすめです。
パターン別に学習できるので、学習内容が頭に定着しやすく、実務ですぐに活用できるでしょう。
また、下記のようにグラフやスクリーンショットが豊富に含まれているので、Tableau初学者でも操作方法に悩むことなく理解できるでしょう。
さらに、2023年7月に出版されているので、最新バージョンで学習できる点もおすすめです。
【初学者向け】Tableauによる最強・最速のデータ可視化テクニック
本書はチャート作成、データ整備の方法から、ダッシュボードとストーリーの作成までTableauの基礎知識を網羅的に理解できるので、初学者におすすめです。
また、本書の後半部分では、Tableau Server・Tableau OnlineでWeb編集機能を使って、基図表を共有する方法まで学習できるので、初級レベルからワンランク上のスキルを身に付けることもできます。
イラストやスクリーンショットが豊富で解説がわかりやすい点が評価されており、Tableau参考書の中でもAmazonレビュー4.1/5(2023年9月現在)と高いのでおすすめです。
【初中級者向け】Tableauデータ分析 ~入門から実践まで~ 第3版
本書はタイトル通り、Tableauの概要解説、ダッシュボード作成方法、基本操作の解説などTableau初学者に向けて基礎致知識を網羅的に学習できます。実際、672ページと学習内容も膨大なので、ひとつひとつ細かく学習したい方におすすめです。
たとえば、分析方法をステップに分けて丁寧に解説しているので、初学者でもつまずきにくくなっています。
また、企業の活用事例も学習できるので、初学者レベルからすぐに実務で活躍できるレベルまで本書1冊で引き上げることができる点が非常におすすめです。
【中上級者向け】Tableauユーザーのための伝わる! わかる! データ分析×ビジュアル表現トレーニング
本書は73問もの問題演習を通じて、伝わりやすいビジュアルを作成するスキルを身に付けることができます。下記のように業務直結の問題を多く掲載しているので、即戦力を養うことができます。
著者はTableau Softwareでセールス経験があり、経済産業省主催のコンテストでTableauを使って金賞受賞している実力者です。そのため、分析の完成度を高める細かなテクニックも学ぶことができます。
ただ、Tableau基礎知識の解説は多くないので、Tableauの基礎スキルに自信のある方におすすめです。
【中上級者向け】Tableauによる最適なダッシュボードの作成と最速のデータ分析テクニック
本書は実務でTableauを活用するときに重要なポイントがまとまっており、Tableau中上級者へのステップアップにおすすめの1冊です。
『Tableauユーザーのための伝わる! わかる! データ分析×ビジュアル表現トレーニング』の著書と同じなので、本書も細かなテクニックまで学習することができます。
ただ、前述の参考書と異なり、本書は解説ベースであるので、理論を学んで知識を付けたい方は本書がおすすめです。
【上級者向け】できる100の新法則 Tableau タブロー ビジュアルWeb分析
本書はGoogleアナリティクス、Google Search ConsoleなどデータソースとしてTableauで分析する手法を学習できるので、WEBマーケターの方におすすめです。
さらに、高度なビジュアライズ方法や分析アイデアも紹介しているので、Tableauを使いこなしてステップアップしたい方にもおすすめです。
ただ、本書は実践内容が豊富でTableau基礎知識の解説はほぼないので、Tableauの基礎知識に不安な方は初学者向けの参考書から学習をはじめましょう。
まとめ
Tableau参考書の選び方のポイントから、Tableau学習のおすすめ参考書を紹介してきました。自分に合った参考書は見つかったでしょうか。
Tableaueを活用することで、わかりやすく分析結果をまとめて、ビジネスの意思決定や課題解決のポイントが見つけやすくなります。この記事が皆様の学習の一助となれば幸いです。
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