「特定のキーワードを含むサイトやニュースを効率的にまとめたい」
「SNSで自社サービス・製品の投稿やコメントのみを収集したい」
このようにWEBやSNSで効率的に情報収集したいという悩みを抱えている方も多いでしょう。
そんな方におすすめなのがWEBスクレイピングです。
WEBスクレイピングを利用すると、特定のキーワードを含むWEBサイトやSNS投稿を自動的に保存したり、天気や株価などの情報をリアルタイムに抽出することができます。
これにより、情報収集に費やす時間を削減して、ほかの重要な業務やプライベートに時間を充てることができます。
本記事では現役データサイエンティストとして日々プログラミングに携わっている経験をもとに、WEBスクレイピング学習のおすすめ参考書を詳しく解説していきます。
監修者
經田 原弘
東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻修了。大学時代は3次元の医療データの平滑化処理を研究テーマとし、大学院時代はJAXAと協業し、月探査機かぐやの衛星データから、月面上の水の存否について調査していた。新卒では株式会社リクルートにてレコメンドシステムの開発等に従事し、現在は製造業系スタートアップにてデータサイエンティストとして勤務。応用情報技術者試験・E資格合格者。
WEBスクレイピングとは
WEBスクレイピングとは、WEBサイトから情報を自動的に取得する技術で、インターネット上に公開されている情報を効率良く集めるために活用されています。その具体的な応用例としては次の通りです。
WEBスクレイピングの活用例
活用例 | できること |
---|---|
ニュース集約 | 複数のニュースサイトから最新の記事を自動的に集め、一か所にまとめる |
SNSの情報分析 | SNSから投稿やコメントを自動的に収集し、ユーザーの反応や感情を分析する |
株価の追跡 | 金融ニュースサイトやWEBサイトから株価や経済ニュースを自動的に収集する |
商品価格の追跡 | ある特定の商品の価格情報を自動的に集め、価格変動をリアルタイムで追跡する |
データ分析 | 複数のWEBサイトから大量のデータを収集し、それを用いて、データセットを作成、分析する |
競合分析 | 競合他社のWEBサイトから商品情報、価格、プロモーション情報などを収集し、市場状況を分析する |
レビュー分析 | 商品やサービスのレビューや評価をWEBサイトから自動的に収集し、ユーザーの意見や嗜好を分析する |
上記はWEBスクレイピングの活用例の一部ですが、これらを業務で活用すれば、時間とコストを大幅に節約し、業務効率化を実現できるでしょう。
WEBスクレイピングの注意点
WEBスクレイピングは非常に便利ですが、注意しなければならない点も多く存在します。特に、以下の3点に注意してWEBスクレイピングを行いましょう。
利用規約を確認する
WEBサイトによっては、スクレイピングを行うこと自体を禁止している場合もあるので、最初にスクレイピングを行いたいWEBサイトの利用規約を確認しましょう。
利用規約はWEBサイトが設けているルールであり、これに違反してスクレイピングを行うと、法的なトラブルに巻き込まれる可能性があります。スクレイピングが許可されているWEBサイトであることを確認した上で、スクレイピングを行いましょう。
負荷をかけすぎない
WEBスクレイピングはWEBサイトのサーバーに負荷をかける行為です。一度に大量のページにアクセスすると、そのWEBサイトが一時的にアクセスできなくなり、サーバーダウンを引き起こすことがあります。
そのため、一定の間隔を置いてデータを取得するようにすることが必要です。これは"politeness policy"と呼ばれ、スクレイピングを行う上でのエチケットともいえます。
著作権を守る
WEBスクレイピングによって得た情報は、著作権を含む可能性があります。この著作権は原則として作成者に帰属し、無断で複製や公開を行うと著作権法に違反する可能性があります。
したがって、スクレイピングによって得た情報を再利用する際には、著作権を尊重し、必要な許可を得ることが重要です。
WEBスクレイピングの参考書の選び方
ここまでである程度「WEBスクレイピングで何ができるか」「どのような点に注意するべきか」のイメージが深まったと思います。ここからは編集部がおすすめする「WEBスクレイピングの参考書の選び方・ポイント」を紹介していきます。
- HTMLとCSSを深く理解できる
- 自分のPythonの知識レベルに合っている
- 最新の情報を扱っている
ポイント①:HTMLとCSSを深く理解できる
WEBスクレイピングを行うとき、対象となるWEBページの構造を理解し、データの抽出・整形やスクレイピング対象の判別とフィルタリングが重要になります。これにはHTMLとCSSの知識が欠かせません。
HTMLはWEBページの構造を表現する言語で、要素やタグの階層構造を理解することにより、必要な要素やデータの位置を特定できます。また、データの抽出や整形には正確なHTML解析が必要であり、CSSは要素の選択やスタイル指定に役立ちます。
さらに、スクレイピング対象の選び方やフィルタリングの方法も重要です。WEBページの構造や要素の属性、CSSのセレクタを使って、対象となる要素を絞り込むことができます。これによって、必要な情報をスムーズに収集することができます。
このようにHTMLとCSSの知識があることで、効果的なWEBスクレイピングとデータ収集の品質向上ができるようになります。
ポイント②:自分のPythonの知識レベルに合っている
WEBスクレイピングの参考書は数多く存在し、超入門レベルから専門技術書レベルまでさまざまなレベルのものが揃っています。そのため、自身のPythonの知識と参考書のレベルが一致しているかをきちんと確認することが重要です。
初学者向けと銘打っているにも関わらず、APIの知識を前提としたり、専門的な説明が多い書籍も存在します。自分に合っている参考書か判断するヒントとして、編集部ではWEBスクレイピングのレベルに応じて、必要なPythonの知識の対応表を作成しました。
WEBスクレイピングのレベルと必要なPython知識
スキルの段階 | できること | 必要なPythonの知識 |
---|---|---|
初級レベル | ・ウィキペディアのページから情報を抽出 ・ニュースサイトから記事のタイトルを取得 | ・文字列操作(strip、splitなど) ・基本的な標準ライブラリ(requests、urllibなど) ・Pythonの基本的な文法(変数、データ型、制御文など) |
中級レベル | ・Eコマースサイトから製品情報と価格を抽出 ・掲示板やSNSから特定のキーワードを含む投稿を収集 | ・例外処理 ・関数とクラスの理解 ・Pythonでのファイル操作 ・BeautifulSoupなどのスクレイピングライブラリの基本的な使用法 |
上級レベル | ・大規模なWEBサイトからのデータ抽出 ・抽出したデータを用いたトレンド分析や可視化 ・動的なWEBサイトからのリアルタイムデータ抽出 | ・非同期処理 ・スレッドとマルチプロセッシング ・データ分析ライブラリの活用(Pandas、Numpy) ・Scrapyなどの高度なスクレイピングフレームワークの使用法 |
上記チャート内で理解できる単語があれば、それがスキルレベルの一つの指標となります。たとえば、「例外処理」が何かがわからないのに、上級レベルのスクレイピングをマスターすることは難しいでしょう。
WEBスクレイピングを始める前に、まずはPythonの基礎文法・構文を学びたいという方は下記の本がおすすめです。
ポイント③:最新の情報を扱っているか
最新の参考書では、最新バージョンでライブラリの追加機能を学習できるので、効率的にスクレイピングに役立ちます。
たとえば、BeautifulSoup 4.7.0以降では、SoupStrainerクラスという機能を活用できます。
これを利用することで、HTML全体を解析する代わりに、必要な情報が含まれている特定のタグや属性だけを対象にパースすることができます。これにより、処理速度の向上やメモリの節約をすることができます。
また、Scrapyにはバージョン1.1.0以降で新たに「Scrapy Splash」が導入されたことで、従来Scrapyだけでは難しかった動的なWEBページのスクレイピングも可能になりました。
このように効率的なWEBスクレイピングに役立つので、最近出版された書籍を選びましょう。
WEBスクレイピングの参考書
ここからは上記の3つの選び方に合わせて、編集部が厳選したWEBスクレイピングを学習できる良書を紹介していきます。
【おすすめ】スラスラ読める Pythonふりがなプログラミング スクレイピング入門
※Amazonの商品ページより引用
本書は上記のようにコードの意味がわかるようにふりがなを振ってあり、直感的にコードの意味を理解できるようになっているので、とくに英語が苦手な方は本書で学習するとよいでしょう。
1〜3章でWEBスクレイピングについて学習した後、4章で集めたデータの加工方法も学習することができるので、実務ですぐに活用できるでしょう。
WEBスクレイピングを学習する参考書のなかでは、ページ数が192ページと比較的少ないので、重要項目を効率的に学習したい方におすすめです。
【初級者向け】Python2年生 スクレイピングのしくみ 体験してわかる!会話でまなべる!
本書はサンプルコードで実際に手を動かしながら、WEBスクレイピングを学習できるので、初学者におすすめの1冊です。
本書は前書である「Python 1年生」の続本となっており、特にpandasの使い方やHTMLなどWEBスクレイピングをするために欠かせない基礎知識を併せて身に付けることができます。
実際、Webスクレイピング系の本の中でもAmazonレビュー評価4.4/5(2023年7月現在)と非常に高く、WEBスクレイピング初学者が最初の1冊に学習する本として最適とのレビューが多くありました。
【中級者向け】Pythonクローリング&スクレイピング
Pythonを使ったクローリングとスクレイピングの手法だけでなく、関連モジュールやライブラリについても併せて学習できるので、Pythonの基礎知識とWebスクレイピングの両方を網羅的に学べる一冊になっています。
さらに、「収集したデータ利用の注意点」や「繰り返しの実行を前提とした設計」も学習できるので、理論だけでなく、実務で役立つ実践スキルも身に付けることができます。
ページ数は440ページと膨大であるため、重要な項目のみ学習したい方には向かないかも知れません。ただし、WEBスクレイピングについて体系的に理解を深めたい方には非常におすすめです。
【中級者向け】Python最速データ収集術
ほかの参考書とは異なり、PythonやHTMLの基礎知識から解説しているので、Python初学者の方も本書1冊でWEBスクレイピングを学習することができます。
さらに、PythonやHTMLの基礎知識を簡単にひと通り理解した上で、WebスクレイピングやAPIの使い方を学習できるので、つまずきにくく、手戻りなく学習を進めることができます。
実際に手を動かしながら学べるWEBスクレイピングの参考書は数が限られていますが、本書はお試し用のサイトやサンプルコードも用意されており、実際に手を動かしながら学習できるため、特におすすめです。
【上級者向け】PythonによるWebスクレイピング 第2版
本書は基本的なWebスクレイピングの手法から、Seleniumによる自動化、OCRを含めた自然言語処理、並列処理など高度なスクレイピング知識も併せて学習できるので、応用レベルまで学習したいという方には非常におすすめです。
また、HTTPリクエストのハンドリング、クローリングの最適化、スクレイピングの自動化などを学習できるので、実務ですぐに活用できるスキルも身に付けることができます。
ただし、Pythonの基礎知識についてはほぼ解説がないので、Python基礎知識を有しており、WEBスクレイピングのレベルが中級以上の方におすすめです。
【上級者向け】Pythonスクレイピングの基本と実践 データサイエンティストのためのWebデータ収集術
本書はデータサイエンティストを対象としているので、学習内容も高度なものが多く含まれます。
たとえば、POSTメソッドやクッキーの対処方法、キャッシュ処理などWEBスクレイピング中上級レベルの知識を身に付けたい方には本書が役立つでしょう。
本書の後半では15の例を通して、実務でのスクレイピングの使い方を学習できるので、理論だけでなく、実践も行いたいという方におすすめです。
まとめ
WEBスクレイピングの参考書の選び方のポイントから、WEBスクレイピング学習のおすすめ参考書を紹介してきました。自分に合った参考書は見つかったでしょうか。
WEBスクレイピングをマスターすると、特定のキーワードを含むWEBサイトを自動的に保存したり、天気や株価などの情報をリアルタイムで抽出するなど、多彩な業務効率化を実現することが可能となります。この記事が皆様の学習の一助となれば幸いです。
編集部ではプログラミングに関連する記事をほかにも公開しています。興味のある方はぜひこちらの記事もご覧ください。