G検定はディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活⽤⽅針を決定して、事業活⽤する能⼒や知識を有しているかを問う資格試験。
デジタルリテラシー協議会が公表している、全てのビジネスパーソンが持つべきデジタルリテラシー(Di-Lite)のうち、AI・ディープラーニング領域に関してはG検定の受験を推奨しており、受験者数は1回で6760人を超える人気資格です。
データサイエンス・機械学習の初学者向けに取得をおすすめしたい資格の一つですが、実際に取得することで「どんな知識を得られるのか」「どんなキャリアパスがあるか」具体的にわかっていない方も多いでしょう。
本記事はG検定講師である筆者の視点から、数多くの受講者に学習のフォローをしていく中で感じた、G検定取得メリットについて解説していきます。
監修者
經田 原弘
東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻修了。大学時代は3次元の医療データの平滑化処理を研究テーマとし、大学院時代はJAXAと協業し、月探査機かぐやの衛星データから、月面上の水の存否について調査していた。新卒では株式会社リクルートにてレコメンドシステムの開発等に従事し、現在は製造業系スタートアップにてデータサイエンティストとして勤務。応用情報技術者試験・E資格合格者。
編集部ではG検定の上位資格であるE資格の取得メリットをまとめた記事を公開しています。興味のある方はそちらも参考にしてみてください。
G検定が意味ないと言われている理由
時間も労力もお金もかかる資格学習において、どれほど役に立つのかは気になるところですが、当然、どんな視点から見るかによって役に立つ資格なのかどうかは変わります。
今回は編集部の独自の調査で、G検定が意味ない・役に立たないといわれる3つの観点をそれぞれ定量的に検証していきます。
理由 | 検証方法 |
---|---|
資格知名度が低い | 他の資格と比較して受験者数がどれくらいか |
難易度が低い | 他の資格と比較して合格率がどれくらいか |
転職に有利にならない | 他の資格と比較して求人数がどれくらいか |
理由①:資格知名度が低い
まずは、G検定が他のAI・統計系の資格と比較して、受験者数がどれほど異なるのかを検証していきます。資格がどれほど認知されているものなのかにより、資格取得を公言したときや履歴書に書くときの印象は変わります。
受験者をデータサイエンス初級~中級の方と想定して、同レベル・類似する資格である「DS検定(データサイエンティスト検定)」「統計検定2級・3級」をリストアップしています。
AI・統計系資格の受験者数比較表
資格名 | 受験者数 |
---|---|
G検定 | 6,760名 |
DS検定 | 1,400名 |
統計検定2級 | 731名 |
統計検定3級 | 320名 |
G検定はほかのAI・統計系の資格と比較して、1回あたりの受験者数6700名と群を抜いて多く、データサイエンス学習の入口として一定の知名度と市場からの信頼性があるといえるでしょう。
実際はリテラシー層の受験も多いためこれだけでは権威性があるとはいえませんが、少なくともAI・機械学習の資格のなかでは最も人気の資格となります。
理由②:難易度が低い
次は①の検証対象と同じ資格をリストアップし、各資格の合格率を比較していきます。一般的に資格難易度が高いこととスキルには相関性があると思われますので、資格難易度は権威性につながるといえるでしょう。
AI・統計系資格の合格率比較表
資格名 | 合格率 |
---|---|
G検定 | 62% |
DS検定 | 66% |
統計検定2級 | 35% |
統計検定3級 | 76% |
G検定の合格率は6割と比較的に高い数値となっていますが、同じ初学者向け資格である統計検定3級・DS検定の合格率も同様に6割になっていることから、データサイエンス初学者程度であれば同水準の合格率になるであると推察できます。
ちなみに統計検定2級のみ合格率が35%と低くなっている仮説としては、「試験範囲に数学知識が求められるかどうか」が関係すると考えます。
統計検定2級の出題範囲には、数Ⅲ+Cレベルの数学知識≒理系大学学部レベルの知識が求められますので、数式を覚え、計算して問題を解くことが求められます。一方で、DS検定やG検定は「用語の理解」や「大まかな分析手法の理解」など、数学よりも国語としての理解を問うものが多いため、入門向け(文系でも学習しやすい)資格です。
数学知識がなく受験ハードルが低いことが、合格率の高さ、延いては受験者数の多さにもつながっていると推測できます。
理由③:転職に有利にならない
最後に、転職に有利に働くかどうかを「企業の求人のなかに資格についての言及があるか」を見ていきます。
大手求人サイトである「Indeed」「求人ボックス」の2媒体のなかで、AI・統計系の各資格がどれくらい求人票に記載があるかを調べました。
AI・統計系資格の求人数比較表
資格名 | Indeed | 求人ボックス |
---|---|---|
G検定 | 7,137件 | 2,355 件 |
DS検定 | 134件 | 571 件 |
統計検定 | 2,527件 | 1,215 件 |
*統計検定2級・3級はマージして「統計検定」で検索
求人票の件数でも、Indeedで7137件・求人ボックスで2366件とG検定が最も多く、採用担当や現場担当へもある程度伝わる認知度はあるといえるでしょう。
ただし、定性的に出題範囲から試験の難易度を読み解くと、G検定の出題範囲のみで実務に活かせるスキルがつくとはいいがたいです。あくまでも資格試験自体が人工知能・ディープラーニングのリテラシーレベルを問うものになっているため、AIプロジェクトの推進や機械学習モデルを組むレベルにはなりません。
そこで、編集部は他のAI資格との「合わせ技」を推奨します。「Python3エンジニア認定データ分析試験」や「統計検定」など、他のAI系の資格も併せて取得をしておくことでより説得力を高められるでしょう。
実際に下記の大手企業(Paypay株式会社)のデータサイエンティストの求人にも、歓迎条件としてG検定が記載されています。
ここまでの情報をまとめると、下記のような特徴であることがわかります。
- AI系の他の資格と比較すると受験者数は最も多く、知名度はある
- 合格率はやや高い初学者向けの資格
- 求人への記載がある数もほかAI資格と比較して最多。ただし、即戦力とはならないため類似資格を併用して取得することでさらに有利になる
G検定に合格するのはどんな人なのか?
G検定は受験者数が6700人を超えるAI・機械学習の資格のなかではトップクラスの人気であることがわかりました。
次に、実際にG検定を「受験をした人はどんな人なのか」「受験に適した人はどんな人なのか」を公開されているデータから推察していきます。(参考:一般社団法人日本ディープラーニング協会)
年齢別の受験者数・割合
年代 | 合格者数 | 割合 |
---|---|---|
10代 | 46 | 1% |
20代 | 1,690 | 40% |
30代 | 1,193 | 28% |
40代 | 850 | 20% |
50代 | 366 | 9% |
60代以上・不明 | 53 | 1% |
総計 | 4,198 | 100% |
年齢別にみていくと20-30代が全体の7割を占めており、比較的に若い合格者が多いことがわかります。一方で40代・50代も合わせて約3割となっており、管理職や学びなおしも兼ねての合格者も多いと推察できるでしょう。
業種別の合格者数・割合
業界 | 割合 |
---|---|
ソフトウェア業 | 15% |
情報処理・提供サービス業 | 18% |
製造業 | 16% |
学生 | 15% |
金融・保険業・不動産業 | 10% |
運輸・通信業 | 5% |
サービス業 | 4% |
無職、その他、不明 | 4% |
コンピュータ及び周辺機器製造または販売業 | 4% |
建設業 | 2% |
卸売・小売業・飲食店 | 2% |
官公庁、公益団体 | 2% |
医療・福祉業 | 1% |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 1% |
教育(学校、研究機関) | 1% |
調査業・広告業 | 1% |
農業、林業、漁業、鉱業 | 0% |
総計 | 100% |
合格者の3分の1はIT系の業界・職種です。システム開発業務のなかでもシステムに機械学習ロジックを組み込む案件など、AI系のプロジェクトが増えている背景も踏まえると、AI実務に近いIT・ソフトウェア関係の業界の人が多いことがわかります。
また、学生(高校生、専門学生、大学・大学院生)が15%と上位にランクインしているのも注目したいポイントです。社会人になる前に初学者レベルのAI知識を学ぼうとする層が一定数いることもわかるでしょう。
G検定の受験対象者は「AI・機械学習の初学者」
ここまでの定量的な情報をまとめていくと
- IT・ソフトウェア関連業界の割合が32%、15%が学生
- 年齢は20-30代を合わせると、68%
という特徴が見えてくるでしょう。
これらの情報を筆者が相対する受講生の定性的な情報と掛け合わせていくと、G検定の受験に適した人は将来的にAI業務に携わりたい人や直近かかわることになった初学者ではないかと推察できます。
G検定取得のメリット
ここからはG検定の取得のメリットについて詳しく解説していきます。
そもそもデータサイエンティストになるにはどのようなスキル・知識のジャンルが求められ、どれくらいのレベルで習得しておくべきなのでしょうか? そこでデジタルリテラシー協会の公式資料を参考に考えていきます。
メリット:機械学習・AIのリテラシーレベルの理解が身につく
デジタルリテラシー協議会は、全てのビジネスパーソンが持つべきデジタルリテラシーを「Di-Lite」として定義し、「求められるスキル」と「スキルに対応する資格」を3つに区分しています。
デジタルリテラシーの分類 | 対応する資格 |
---|---|
IT・ソフトウェア領域 | ITパスポート試験 |
人工知能(AI)・ディープラーニング領域 | G検定 |
数理・データサイエンス領域 | データサイエンティスト検定 |
G検定のメリットはこの中で人工知能・ディープラーニング領域でのリテラシーレベルのスキルを保有していることを証明することができることです。
DX人材になるための足掛かりとして、データサイエンティスト・アナリスト・エンジニアなど、直接的にAI業務に携わりたい人にとっても、学習のはじめの一歩としておすすめです。
G検定ではコーディングは学べない
ただし、機械学習モデルを組み込んだり、AIプロジェクトの推進をしていくような高いレベルを目指す場合は、上位資格であるE資格で理論を学び、実務を通じて身に着けていくことがおすすめです。
さらに求人への歓迎条件の定性情報とともに考察していくと、上位資格のE資格や、数理・統計知識が学べる「統計検定」、Pythonの実装技術が学べる「python3 エンジニア認定基礎試験」なども併せて取得していくことで、就職・転職にもより活かせるようになっていくでしょう。
G検定は独学で合格できる?
DS検定合格者の体験談を読んでみると、勉強方法は「白本」と呼ばれる公式テキストで全体像を理解し、「黒本」「赤本」と呼ばれる問題集で練習問題を解いていくというパターンが多いです。
公式テキストで全体像を理解
白本(深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト)公式テキスト)はG検定を主催する日本ディープラーニング協会が発行する公式本です。
監修と試験運営団体が同一なため、シラバスが改訂されても最新版を買っていれば試験範囲に準拠した内容になっています。イラストも豊富で初心者でも理解しやすいですので、ぜひ活用しましょう。
公式問題集で回答のスピード感を確認
そして、G検定対策において大事なのは「問題演習」です。
G検定は試験中の検索が許可されていますが、合格者の声を聞く限りは検索をしている時間的余裕はありません。試験時間120分に対して、問題数は220問となるため、1問あたりにかけられる時間は、約30秒程度とスピーディな解答が求められます。
正答率もそうですが、実際の試験と同様のスピードで反射的に解けるレベルになるまで問題集で演習をしましょう。
問題集には黒本(徹底攻略ディープラーニングG検定ジェネラリスト問題集)を活用しましょう。
下記の本は問題集に加えて購入特典でオンライン模試が付録しており、制限時間の厳しい本試験と同様の環境で対策することができます。ぜひ試験前に活用してみてください。
G検定対策のおすすめ参考書
ここからは数多くの合格者を見てきた筆者の目線から、おすすめの参考書を紹介していきます。G検定の対策本は数多く出版されていますが、公式テキスト1冊+問題集1冊(不安な方は2冊程度)の分量で学習すれば合格には十分です。
編集部では、G検定の参考書について「選び方」や「参考書を活用した勉強方法」までを、より詳しく下記の記事で解説しています。気になる方はぜひ下記の記事も参考にしてみてください。
深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト)公式テキスト
前述の通り、教科書的な本を1冊参考にしながら、問題集を解いていくことをおすすめしています。
白本(深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト)公式テキスト)はG検定を主催する日本ディープラーニング協会が発行する公式本です。
監修と試験運営団体が同一なため、シラバスが改訂されても最新版を買っていれば試験範囲に準拠した内容になっています。イラストも豊富で初心者でも理解しやすいですので、ぜひ活用しましょう。
最短突破 ディープラーニングG検定(ジェネラリスト) 問題集
「AVIELEN AI TREND (旧:全人類がわかる統計学)」という統計学習サイトの運営元で知られるAVILENが監修をしたテキストになります。イラストが多くてわかりやすいほか、章単位で問題→問題の解説→重要ワードまとめという構成になっていて、解説のボリュームが多い問題集となっています。
この本のおすすめポイントは、問題集でありながら、さらにオンラインでの模試まで付属しているという点です。オンライン模試では制限時間がついているため、解答のスピーディさが求められるG検定を本番と同じ環境でできるのは魅力的な点でしょう。
AI白書 2022 (単行本)
まず、AI・ディープラーニングの最新事例をキャッチアップするために活用したいのが、AI白書編集委員会が発行する「AI白書」です。
AI・ディープラーニング領域は変化が激しいため実務でも常にアップデートが必要です。なので実際の試験でも、G検定・E資格は最新のトピックについて問われることが多いです。5年前の教科書を使用していてもその期間の技術が歯抜けとなってしまうため、直近のものをカバーするためにも購入しておきましょう。