Excelを一通り使えるようになったらきちんと勉強したいのが、統計学を応用したExcelのデータ分析スキル。
しかしながら、どのように統計学とExcelを勉強したらよいかわからない人も多いのではないでしょうか?
そこで編集部がおすすめしたいのがExcelのデータ分析スキルを証明できる「ビジネス統計スペシャリスト」という資格です。
本試験は実務で活用できることを目的として統計知識を学びつつ、Excelのデータ分析スキルも学習できるので、本質からExcelでのデータ分析スキルを身に付けたい方に非常におすすめです。
本記事では現役のデータサイエンティストの視点からビジネス統計スペシャリスト対策におすすめの参考書をレベル別に紹介します。
監修者
經田 原弘
東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻修了。大学時代は3次元の医療データの平滑化処理を研究テーマとし、大学院時代はJAXAと協業し、月探査機かぐやの衛星データから、月面上の水の存否について調査していた。新卒では株式会社リクルートにてレコメンドシステムの開発等に従事し、現在は製造業系スタートアップにてデータサイエンティストとして勤務。応用情報技術者試験・E資格合格者。
ビジネス統計スペシャリストの概要
ビジネス統計スペシャリストは実務で必要となる統計知識とExcelでのデータ分析スキルを証明する資格です。
初級者向けの「エクセル分析ベーシック」と中級者向けの「エクセル分析スペシャリスト」の2段階で構成されています。それぞれのレベルの違いを統計知識を測る資格試験として権威のある統計検定を指標に見てみましょう。
ちなみに、統計検定3級は高校生レベルの数学知識、統計検定2級は大学入門レベルの数学知識が求められるといわれています。
試験名 | 求められる知識 |
---|---|
エクセル分析ベーシック | ・統計検定3級程度の知識(中央値・最頻値など) |
エクセル分析スペシャリスト | ・統計検定2級程度の知識(F検定・カイ二乗検定など) |
編集部では「エクセル分析ベーシック」「エクセル分析スペシャリスト」各資格の勉強方法を深堀りし、詳細にまとめた記事も作成しています。是非下記のリンクからご覧ください。
ビジネス統計スペシャリストを学習する参考書の選び方
ビジネス統計スペシャリストを学習する参考書は非常に多く出版されています。
自分に適した参考書を見つけるために、「選び方」を確認しておきましょう。まずは参考書を選ぶ際に必ずチェックしておきたい「3つのポイント」をご紹介します。
- 出題範囲を網羅的にカバーしている参考書を選ぶ
- 統計学の基本知識も学習できる
- 実務のデータを使った解説・演習問題が豊富にある
ポイント①:出題範囲を網羅的にカバーしている参考書を選ぶ
上記で紹介した通り、ビジネス統計スペシャリストは初級者向けの「エクセル分析ベーシック」と中級者向けの「エクセル分析スペシャリスト」の2段階で構成されています。
それぞれのレベルの出題範囲は以下の通りです。
エクセル分析ベーシックの出題範囲
分類 | 統計知識 | Excel操作(例) |
---|---|---|
ビジネスデータ把握力 | 1.平均 2.中央値 3.最頻値 4.レンジ 5.標準偏差 | 1.AVERAGE関数 2.MEDIAN関数 3.MODE関数 4.MAX関数・MIN関数 5.STDEV. P関数・STDEV. S関数 |
ビジネス課題発見力 | 1.外れ値の検出 2.度数分布表 3.標準化 4.移動平均 5.季節調整 | 1.QURATILE.INC関数・QUARTILE.EXC関数 2.FREQUENCY関数 3.STANDARDIZE関数 4.5.分析ツール |
ビジネス仮説検証力 | 1.集計 2.散布図 3.相関分析 4.回帰分析 5.最適値 | 1.RANK.EQ関数・SUMIF関数・ COUNTIFS関数・ピボットテーブル 2.分析ツール 3.CORREL関数・分析ツール 4.FORECAST()関数・分析ツール 5.ソルバー |
エクセル分析ベーシックでは、大きく ➀統計学の基本用語(最頻値や最適値など) ②Excel操作問題 の2つが出題されます。
そのため、統計学の基本用語とExcel操作を結び付けて学習できる参考書を選ぶと、知識が定着しやすいのでおすすめです。
エクセル分析スペシャリストの出題範囲
分類 | 統計知識 | Excel操作(例) |
---|---|---|
ビジネスデータ把握力 | 1.分析データの理解 2.変量データのまとめ方 3.データの視覚化と基本統計量 4.基本統計量とデータのばらつき | 1.分析ツール 2.クイック分析・スパークライン 3.QURATILE関数・STDEV.S関数 |
ビジネス課題発見力 | 仮説検定 (クロス集計・カイ二乗検定・t検定・F検定・回帰分析など) | 1.ピボットテーブル・フィルタ―条件・CHISQ.TEST関数 2.TTEST関数・分析ツール 3.4.CORREL関数・FORECAST()関数・分析ツール |
ビジネス仮説検証力 | 回帰分析の応用 (重回帰分析・ダミー変数の活用・時系列データ分析など) | 1.LINEST関数・分析ツール 2.置換・IF関数・分析ツール |
エクセル分析スペシャリストでは、重回帰分析やt検定やF検定などの仮説検定が中心に出題されます。
そのため、Excelで検定手法を学習できたり、分析ツールや関数を駆使した回帰分析の手法を学習できる参考書がおすすめといえます。
どちらのレベルも統計学・Excelの幅広い知識が求められるので、出題範囲を網羅的にカバーしている参考書を選ぶことも大切です。
ポイント②:統計学の基礎知識も学習できる
2つ目のポイントはExcelだけでなく統計学の知識も学習できることです。
ビジネス統計スペシャリスト試験はExcelのデータ分析スキルを問う試験ですが、下記のように統計知識を問う出題もあります。
エクセル分析ベーシックの出題例
エクセル分析スペシャリストの出題例
Excelはデータ管理やグラフ作成などを行うためのツールであるため、Excelの学習のみでは統計解析の背景にある理論や方法を理解することができません。
とくに、上位資格である「エクセル分析スペシャリスト」は仮説検定・推定などが問われるので、Excelの使い方以上に統計知識の理解がなければ関数を使いこなすことができません。そのため、統計学の基礎知識を身に付けることが重要になります。
統計学の基礎知識に不安のある方は本書から学習をはじめてみましょう。
ビジネス統計スペシャリストで出題される統計知識を中学数学で基礎から学ぶことができます。
「最初から統計学の知識とExcel操作を結び付けて学ぶことが不安」
「統計学の知識をゼロからしっかり学びたい」
という方におすすめの一冊です。
ヒストグラムや標準偏差といった基礎内容からスタートしながらも、エクセル分析スペシャリストの出題範囲である「検定」や「区間推定」まで学習することができます。
ポイント③:実務のデータを使った解説・演習問題が豊富にある
3つ目のポイントは実務のデータを使った解説・演習問題が多い参考書を選ぶことです。
初学者にとっては、Excelの基本機能や関数などがわからないことが多く、どのように利用するかがわかりにくいことがあります。
そこで、実務のデータを使った解説・演習問題があることで、具体的なデータ分析の活用イメージを持って学習でき、再現性を高めることが重要です。
たとえば、エクセル分析ベーシックの出題範囲であるSTDEV. P関数を例に見てみましょう。
STDEV. P関数:データの標準偏差を計算するExcel関数で「STDEV.P(number1, [number2], ...)」という引数で入力する
number1: 標準偏差を計算するデータの最初の数値
number2: 標準偏差を計算するデータセットの2番目以降の数値
次に、実務でのデータを活用した解説を見てみましょう。たとえば、以下のような8人の年齢に関するデータがあったとします。
番号 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
年齢 | 28 | 35 | 42 | 27 | 31 | 29 | 33 | 36 |
このとき、「=STDEV.P(B2:I2)」でデータの標準偏差が求められます。これで標準偏差は約4.662と求めることができます。実務のデータを活用した解説があることで、関数の活用イメージを掴みながら学習をすることができます。
さらに、演習問題で実際に手を動かすことで、参考書で学習した内容が理解できているかどうか明確になり、効率的に学習を進めることができます。
エクセル分析ベーシックのおすすめ参考書3選
はじめに編集部が厳選したビジネス統計スペシャリストエクセル分析ベーシックの出題範囲を学べる良書を紹介していきます。
【Excel操作の基礎に不安のある方におすすめ】Excel 最強の教科書
Excel初学者がいきなりデータ分析を学習するとExcelの基本操作でつまずく可能性があり、学習の手戻りが生じるかもしれません。
そのため、Excelの基礎知識や基本操作に不安のある方は本書から学習すると、データ分析の学習を効率的に進めることができるでしょう。
本書は「セルの色の変え方」や「非表示機能の使い方」などExcel操作の基礎から、Excelのデータ分析で活用する重回帰分析やソルバーなど応用までExcelスキルを網羅的に学ぶことができます。
また、実践的な例が多く紹介されているため、実務での活用イメージを持ちやすくなっている点が初学者におすすめです。
Excel で学ぶ ビジネスデータ分析の基礎
本書はビジネス統計スペシャリストエクセル分析ベーシック唯一の公式対策本であり、出題範囲を網羅的に学習できます。
そのため、ビジネス統計スペシャリストエクセル分析ベーシック合格者の多くが本書で試験対策しており、試験対策に必須の一冊といえるでしょう。
Excelのセルやワークシートの編集方法など基礎内容にはじまり、回帰分析の手法、ピボットテーブルの使い方などExcelでのデータ分析に欠かせないスキルを身に付けることができるので、Excel初学者に非常におすすめです。
統計学の基礎から学ぶ Excelデータ分析の全知識
「統計学の基礎からしっかり学ぶ」→「学んだことをExcelを使って実践する」という構成になっており、統計学の知識もExcelでのデータ分析の手法もどちらも1冊で学習することができます。
統計学の知識と実際のExcel操作を結びつけて学ぶことができますし、実際に学習内容をサンプルデータで演習できるので、理解が深まりやすい点が本書のメリットです。
標準偏差や相関分析といったエクセル分析ベーシックの出題範囲も網羅的に学習できるので、データ分析ベーシックの対策にも活用できます。
エクセル分析スペシャリストのおすすめ参考書3選
つぎに編集部が厳選したビジネス統計スペシャリストエクセル分析スペシャリストの出題範囲を学べる良書を紹介していきます。
Excel で学ぶ 実践ビジネスデータ分析
本書はビジネス統計スペシャリストエクセル分析スペシャリスト唯一の公式対策本であり、出題範囲を網羅的に学習できます。
そのため、ビジネス統計スペシャリストエクセル分析スペシャリスト合格者の多くが本書で試験対策しており、試験対策に必須の一冊といえるでしょう。
Excelのセルやワークシートの編集方法など基礎内容にはじまり、回帰分析の手法、ピボットテーブルの使い方などExcelでのデータ分析に欠かせないスキルを身に付けることができるので、Excel初学者に非常におすすめです。
Excelでできるらくらく統計解析
本書は統計学の基本から、推定・検定・多変量解析などの複雑な統計処理まで統計知識とExcel操作を結び付けながら学習できます。
推定・検定・多変量解析といったエクセル分析スペシャリストの出題範囲をカバーしているため、試験対策として非常におすすめです。
また、Excel2019に対応した最新バージョンのExcelの画面を見ながら学習できるため、Excel操作でつまずきにくくなっているので、Excel操作に自信がない方にもおすすめです。
事例で学ぶExcel統計
本書は身近なデータを用いてExcelで統計学を学習できるので、具体的な活用イメージが湧き、実務ですぐに活用できるようになります。
仮説検定や回帰分析といったエクセル分析スペシャリストの出題範囲も学習できるので、試験対策としても活用できます。
また、単にデータ分析手法の説明にとどまらず、「なぜその計算をするのか」を詳しく説明しているので、データ分析を本質から理解できます。
統計知識を深く学びつつ、Excelのデータ分析スキルを高められるので、データサイエンティストを目指している方はデータ分析の背景理解にも繋がり、非常におすすめです。
まとめ
ビジネス統計スペシャリストを学習する参考書の選び方のポイントやおすすめ参考書を紹介してきました。自分に合った参考書は見つかったでしょうか。
ビジネス統計スペシャリストは実務で必要となる統計知識とExcelでのデータ分析スキルを学習できるので、データサイエンティストを目指す方におすすめの資格です。本記事が学習を始めるきっかけになれば幸いです。
編集部ではビジネス統計スペシャリストをレベル別にさらに詳しく紹介しています。興味のある方はぜひ下記記事もご覧ください。