Pythonはデータ分析・AI開発において、多様なライブラリ・フレームワークに対応しており、注目を集めているプログラミング言語です。
しかしながら勉強方法が多様にある中で「どのように勉強すると効率よく勉強できるかわからない」という人も多いのではないでしょうか?
そんな方におすすめするのがPythonの資格取得。資格取得を学習の中間目標とすることで網羅的・体系的な学習が可能になるため、初学者にとっては有効な学習手段といえます。
本記事ではAI講師として数々の受講生を見てきた編集部の視点から、Python各資格の難易度、さらに最後にはPython学習のロードマップ・勉強方法まで詳しく解説していきます。
監修者
經田 原弘
東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻修了。大学時代は3次元の医療データの平滑化処理を研究テーマとし、大学院時代はJAXAと協業し、月探査機かぐやの衛星データから、月面上の水の存否について調査していた。新卒では株式会社リクルートにてレコメンドシステムの開発等に従事し、現在は製造業系スタートアップにてデータサイエンティストとして勤務。応用情報技術者試験・E資格合格者。
Python資格取得のメリット
まずはそもそもPythonの資格を取得するとどのようなメリットがあるのかを整理していきます。下記は編集部がまとめたPython資格取得することによるメリットです。
- データサイエンティストを目指す「中間目標」になる
- Python実装の網羅的/体系的な学びになる≒効率的に学習できる
- 最新の出題範囲は常にキャッチアップ(Pytorch・TensorFlow)
編集部ではPython資格取得のメリットについて詳しくまとめた記事も用意しておりますので、気になる方はぜひ下記リンクからご覧ください。
メリット①:データサイエンティストを目指す「中間目標」になる
一つ目のメリットはデータサイエンティストを目指す「中間目標」としての資格取得ができるという点です。
そもそもデータサイエンティストになるにはどのようなスキル・知識のジャンルが求められ、どれくらいのレベルで習得しておくべきなのでしょうか? データサイエンス協会の公式資料を参考に、Pythonがデータサイエンティストになるに当たってどの要素に求められるかを定性的に検証していきます。
①データサイエンス力 | 情報処理、人工知能、統計学などの情報科学系の知恵を理解し、使う力 |
②データエンジニアリング力 | データサイエンスを意味のある形に使えるように実装・運用できるようにする力 |
③ビジネス力 | 課題背景を理解した上でビジネス課題を整理し解決する力 |
上記の図は、同協会が定義したデータサイエンティストに必要な3つのスキルセットです。データサイエンティストに必要なスキルを、①データサイエンス力、②データエンジニアリング力、③ビジネス力の3つに大別しています。
Pythonを書けることはこの中で、データサイエンス・データエンジニアリングの2つのスキルを身に着けるに当たって必要になる絶対条件です。
データサイエンティストやデータエンジニアを目指す場合はPythonが書けることは絶対条件であるため、「資格」を中間目標としてある程度網羅的に学習すると、直接的に実務に活きるようになるでしょう。
さらにデータサイエンス協会ではデータサイエンティストがレベルごとにどのようなスキルが求められるかを全528項目に細分化しており、「スキル・タスクチェックシート」と公式HPで公開しています。
例えば、Pythonでライブラリ/フレームワークを理解したら、次はディープラーニングのモデル構築といったように、学習のステップを事前に明確にしておくとより目標が細分化されます。
データサイエンティストやエンジニアを目指すに当たって、Pythonのどのようなスキルが必要かのアタリをつけ、中間目標として資格を通じて網羅的に学習すると、直接的に実務に活きやすくなると筆者は考えます。
スキルを発展していけばAIエンジニアやデータサイエンティストなど幅広い職種へのキャリアパスが開けていくことでしょう
メリット②:Python実装の網羅的/体系的な学びになる≒効率的に学習できる
二つ目のメリットはPython学習において網羅的・体系的な学びを享受することができる点です。
世の中に学習できる教材/機会は溢れているなか、どのような順番でどれくらい勉強すれば学習したといえるのかわからないという悩みは多いのではないでしょうか?
下記のPython系資格は試験範囲の元となる参考書が指定されており、参考書の内容の定着具合をテストで試すことができます。
資格名 | 公式書籍 |
---|---|
Python3エンジニア認定基礎試験 | Pythonチュートリアル |
Python3エンジニア認定データ分析試験 | Pythonによるあたらしいデータ分析の教科書 |
Python3エンジニア認定実践試験 | Python実践レシピ |
初心者で右も左もわからない中、手探りで自分に合う勉強方法を見つけていくよりも体系的なカリキュラムで学習+不足部分を自分で学習という方が効率的な可能性もあります。
メリット③:転職に有利
ITRの発表したデータによるとAIの主要8市場は2019~2024年までの5年間で年平均20.6%で成長すると見立てており、今後も伸びていく市場です。
一方、AI・データサイエンス領域の市場の伸びに対して、人材供給が間に合っていない現状があります。求人BOXによると、データサイエンティストの平均年収は約696万円と、日本の平均年収と比較すると高い傾向にあります。
また、大手求人サイトのdodaでN=1の求人例を見ていくと実際に大手企業(Paypay株式会社)のデータサイエンティストの求人の歓迎条件として「Python3エンジニア認定データ分析試験」が記載されています。資格自体のスキルレベルは転職市場で通用する一定基準は満たしていると推測します。
編集部が選ぶ!おすすめPython資格一覧
次は、編集部が厳選したPython資格の4つを難易度順に紹介していきます。
4つのうち3つは直接「Pythonの使い方」を学ぶことができる資格で、1つはPythonを応用してディープラーニングの実装を学べる資格です。それぞれの試験の概要と難易度をまとめた表が下記になります。
おすすめPython資格一覧
試験名 | 受験者数 | 合格率(難易度) | 資格で学べること |
---|---|---|---|
Python3エンジニア認定基礎試験 | 3,300名/年 | 約75% | ・Pythonの基本文法の理解ができる・Pythonのデータ構造を理解して、基本的なコードを書けるようになる |
Python3エンジニア認定データ分析試験 | 3,100名/年 | 86% | ・標準ライブラリを活用してPythonでデータ分析ができる |
Python3エンジニア認定実践試験 | - | 55.6%(ベータ版の合格率) | ・標準ライブラリ/外部ライブラリを活用して、Pythonでより高度なプログラム作成ができる・パフォーマンスの最適化を考えられるようになる |
E資格 | 2,224名 | 73.1% | ・ディープラーニングの実装スキルが身につく・論文を読み解き、ディープラーニングのモデル構築ができるようになる |
【初学者向け】Python3エンジニア認定基礎試験
試験名 | Python3エンジニア認定基礎試験 |
資格取得後にできること | ・Pythonの基本文法の理解ができる・Pythonのデータ構造を理解して、基本的なコードを書けるようになる |
主な出題内容 | ・データ構造 (リスト型・集合型・辞書型・del文) ・制御構造ツール (if文・for文・break文・continue文など) |
Python3エンジニア認定基礎試験は、Pythonの基本文法やデータ構造、制御構造ツールが問われ、Pytonエンジニアとしての基本スキルがあることを証明できる試験です。
Python3エンジニア認定基礎試験の学習を通して、Pythonの重要知識を網羅的に学べるというメリットがあります。
Python3エンジニア認定基礎試験は『Pythonチュートリアル』という本が出題範囲になっており、本書で学ぶ「制御構造ツール」では「if文」「for文」「range()関数」など、Pythonでプログラム作成するための必須知識を網羅的に学ぶことができます。
編集部ではPython3エンジニア認定基礎試験の難易度や勉強方法をまとめた記事も執筆しています。気になる方はぜひ下記の記事もご覧ください。
【初学者向け】Python3エンジニア認定データ分析試験
試験名 | Python3エンジニア認定データ分析試験 |
資格取得後にできること | ・ライブラリを活用してPythonで分析ができる |
主な出題内容 | ・ライブラリによる分析実践 (NumPy・Matplotlib・scikit-learnなど)・数学の基礎知識 (線形代数・確率・基礎解析など) |
Python3エンジニア認定データ分析試験はライブラリを活用したプログラミング知識がどの程度あるのか証明する試験です。
Python3エンジニア認定データ分析試験の取得メリットは、まさにこのライブラリを活用して、高度なプログラム作成が可能になることです。
ライブラリとは汎用性の高い関数やソースコードが集まったプログラムを補うための部品です。「NumPy」「pandas」「Matplotlib」「scikit-learn」の4つの代表的なライブラリを活用すると、複雑なソースコードを自身のプログラムに取り込めるので、手早く高度なプログラムを作成できるようになります。
編集部では「Python3エンジニア認定データ分析試験」の詳細をまとめた記事も執筆しています。気になる方はぜひ下記の記事もご覧ください。
【中級者向け】Python3エンジニア認定実践試験
試験名 | Python3エンジニア認定実践試験 |
資格取得後にできること | ・標準ライブラリ/外部ライブラリを活用して、Pythonでより高度なプログラム作成ができる ・パフォーマンスの最適化を考えられるようになる |
主な出題内容 | ・Pythonの言語使用 (例外処理・with文・ジェネレーター・デコレーターなど) ・Pythonのクラス (class構文・dataclass・オブジェクト関連関数など) ・データ型とアルゴリズム (二分法アルゴリズムの利用・イテレーターの組み合わせなど) |
Python3エンジニア認定実践試験はPythonを実務で活用するうえで欠かせない機能やライブラリの使い方を問う試験です。
Python3エンジニア認定基礎・データ分析試験の学習は、Pythonのデータ構造や文法、標準ライブラリなど基礎内容にとどまっており、実務レベルというよりは基礎固めが主眼の資格でした。しかし、本試験ではPythonを実務で活用するための機能やライブラリを学習することができます。
たとえば、本試験で学ぶ「 ソースコードの自動整形」「デバッグ」は以下のように実務に活かすことができます。
・ソースコードの自動整形
ユーザーの環境に依存せずに、コードのフォーマットを開発者間で統一することができるようになります。設定ファイルを開発者間で共有することができるので、同じ整形ルールで開発可能になるメリットがあります。
・デバッグ
デバッグを行うことでエラーを正確に特定し、プログラムのバグを見つけることができるようになります。実務でシステム開発する際は必ず、単体テスト・結合テスト・システムテストの各工程で必ずデバックを行い、必要に応じてバグの修正が行われています。
このように本試験の学習内容は実務に直結しているので、Pythonを実務で活用するためには非常に有効といえます
【中級者向け】E資格
E資格の試験範囲
応用数学 | 確率・統計、情報理論 |
機械学習 | 機械学習の基礎、実用的な方法論、強化学習 |
深層学習 | 順伝播型ネットワーク、深層モデルのための正則化、深層モデルのための最適化、畳み込みネットワーク、回帰結合型ニューラルネットワークと再帰的ネットワーク、生成モデル、深層強化学習、グラフニューラルネットワーク、深層学習の適用方法、距離学習、メタ学習、深層学習の説明性 |
開発・運用環境 | ミドルウェア、エッジコンピューティング、分散処理、アクセラレータ、環境構築 |
E資格はAI・機械学習の実装スキルを問う資格。年間数千人の受験者を誇るAI・機械学習系における人気資格のひとつです。
直接的にPythonを学ぶ資格ではありませんが、学んだPythonスキルをディープラーニングやAIの実装スキルへと昇華させていくことができるのでとてもおすすめの資格です。
2023年1月時点ではE資格の試験範囲は「①応用数学」「②機械学習」「③深層学習」「④開発・運用環境」の4つに大別されます。2022年秋季(8月)実施の試験よりシラバスが改訂されていますので、詳細を確認したい方はJDLAの公式ホームページよりご確認ください。
E資格を学ぶと、ディープラーニングの基礎から、実務・研究における機械学習のモデルの選定や実装まで幅広く学ぶことができますし、さらにスキルを発展させると論文に記載されている数式・モデルを読み解いて実装できるようになることもスムーズにできるようになります。
E資格の取得メリット
E資格取得のメリットは「体系的・網羅的に学べる」ことです。現実問題として、初心者が機械学習・AIの理論から実装までを体系的に学ぶことができる場所は多くはありません。右も左もわからないまま学習を進めている方も多いでしょう。
そんな前提で「これさえ勉強すれば大丈夫」という範囲を体系的かつ網羅的に学ぶことができるのは貴重な機会です。
合格者の中には、文系かつ未経験で合格した方もおり、それまで全くプログラミングや数学を学んだことがない初学者にでも合格できるような順序だった学びを享受できる点が大きなメリットと言えるでしょう。
編集部ではE資格の取得メリットを詳細にまとめた記事も用意していますので、興味のある方は下記記事からご覧ください。
Python資格の勉強方法
Pythonに限らず、プログラミングは学習のロードマップを描き、順序だてて勉強していくと最短効率で学習が定着していきます。
下記は初学者を指導してきた経験やデータサイエンス実務に携わっていくなかで編集部独自で定義した、初級者〜中級者になるまでのPythonの学習ロードマップです。
STEP①:Pythonの基礎文法をマスターする
まずはPythonの基礎文法を一通り覚えておくことから始めます。
ここでは、データ構造(リスト型・集合型・辞書型・del文)や、制御構造ツール(if文・for文・break文・continue文)など、Pythonでどんなことをするにしても必須となる知識を習得することがゴールとなります。
編集部ではPython初心者は下記の学習本を活用することをおすすめしています。基本的な文法だけでなく、画像処理・アプリ開発・WebAPIをつかったスクレイピングまで幅広い用途でのPythonの活用方法を、豊富なイラストでわかりやすく説明しているおすすめの一冊です。
STEP②:豊富なライブラリの使い方知る
次のステップは、標準ライブラリや外部ライブラリを活用して分析ができるようになることです。ライブラリとは汎用性の高い関数やソースコードが集まった”部品”です。
Pythonは「NumPy」「pandas」など、特に分析用のライブラリが充実した言語として有名です。ライブラリを活用すると、複雑なソースコードを自身のプログラムに取り込めるので、手早く高度なプログラムを作成できるようになります。
編集部ではライブラリの学習には下記の本をおすすめしています。本書では、「Numpy」「pandas」「Matplotlib」「scikit-learn」の代表的な4つのライブラリについて基礎から応用まで学ぶことができることが特徴です。
各章のモジュールはサンプルコード付きで解説されており、「 基礎事項→使用例(事例) 」 のように適宜、実際の使用例が記載されているので、具体的なイメージを持って理解することができます。
さらに、本書はデータ分析から機械学習までの一連の流れを学ぶことができ、今後ディープラーニングやAI開発を行いたい方にも非常におすすめです。
応用の数学知識は必須!
ディープラーニングには何をするにせよ、高校数学(ベクトル、行列、確率)や、大学数学(偏微分、全微分、線形代数)などの理解が必須になります。
深層強化学習などでは暗記した状態とは別の形で出題されることも多く、数式の深い理解が必要になります。「例題を解いても別の問題では解けない……」となるくらいなら、結局のところは基礎固めが近道になるケースもよく聞きます。
下記の書籍はディープラーニングに必要な数学を高校1年生レベルの数学からのやり直しができる良書となっているのでおすすめです。
「ディープラーニングを勉強したいけど高校レベルの数学からやり直したい」「文系だからそもそも応用数学を勉強していない」という方におすすめの一冊。
ディープラーニングに使用する数学に絞って、高校1年生レベルから復習できる良書です。目的がハッキリしているため学習の無駄がなく、効率よく勉強できることが購入のメリットです。試験範囲となっている「微分」「線形代数」「確率・統計」などを網羅的にカバーできます。
高いレベルを目指すにはまず足元から。数学的な理論をベースにディープラーニングを理解しているかどうかで、データエンジニアとしての基礎体力が大きく変わってきますので、数学に自信がない方はぜひ買っておきたい一冊です。
STEP③:アルゴリズムやモデルを組めるようになる
実務・研究における機械学習のモデルの選定や実装まで幅広く学ぶことができますし、さらにスキルを発展させると論文に記載されている数式・モデルを読み解いて実装できるようになることもスムーズにできるようになります。
このレベルで多くの方が参考にされているのが「ゼロから作るディープラーニング」シリーズです。この本は「①基礎と理論」「②自然言語」と2冊に分かれておりますが、①・②ともにコードがほぼそのまま試験問題に出ることもあります。
本書は普段はブラックボックスになっているディープラーニングの処理を理解することができる良書です。コードを参考に手を動かしながら学ぶことでディープラーニングの理論や本質的な理解に近づくことが期待できます。
また、この本はベストセラーとなっているため、学習で少しわからない部分があったとしてもGoogle検索をすれば解説記事・動画が多様に出てくることも本書の魅力です。本を理解しながら進めれば実装力を上げられることは、数多くの読者が証明していますので是非購入しましょう。